工場や事業所を作るにあたり、周辺への環境対策は必須とされることのひとつです。とくに大量の排水は河川に直接流す場合はもちろん、公共下水道を利用する場合にも前処理が求められることがほとんどです。

こうした需要に応えるのが「加圧浮上装置」です。

加圧浮上装置・TF型

加圧浮上装置の仕組み

「加圧浮上装置」を一言で説明すると「泡を使って水中の浮遊物質を取り除く設備」です。

水と空気に圧力を加え、微細な泡を発生

空気は水に少しだけ含まれており、魚などはこうして溶け込んだ空気の酸素を使って呼吸をおこなっています。ただし、溶け込める限界の量は決まっており、それ以上の空気は通常の大気圧下で含むことができません。

ただし圧力を加えるなどの方法で無理矢理溶け込ませることはできるため、一般的な加圧浮上装置では水・空気両方に圧力をかけることで水に空気を溶け込ませます。、その後圧力を戻すと、限界を超えた空気が微細な泡となって発生するのです。この微細な泡が次の工程で重要な役割を果たします。

浮遊物質に泡が付着して浮上させる

加圧によって発生した微細な泡は、水中の浮遊物質を付着させながら表面まで浮上します。このようにして水面へ浮遊物質が集まり、「スカム」と呼ばれる状態になるのです。

なお凝集剤を使い、あらかじめ泡が付着しやすくする処理をすることも少なくありません。

水表面の「スカム」を取り除く

最終段階では、泡に載って表面に浮かんできた浮遊物質(スカム)を集め、取り除きます。取り除いたスカムは汚泥として搬出し、処理することが可能です。

なお田中工業所の開発した「TF型」では、空気のみを加圧して微細な泡を発生させる仕組みを製作しました。このようにすることで空気・水の圧力バランスの調整が不要となり、加圧浮上装置のスムーズな立ち上げができるなど多くのメリットがあります。

加圧浮上装置を使用するメリット

このような仕組みを使った「加圧浮上装置」を水処理に使うことで、時間・スペース両面で大きなメリットを得ることができます。

排水処理時間の短縮

一般的に物質を集めて沈殿処理を行う場合、自然に物質が沈むのを待つのに1~2時間、状況によってはそれ以上の時間がかかります。一方加圧浮上装置を使用した場合の処理時間は15~30分程度と、大幅な時間の短縮が見込めるのです。

処理装置の省スペース化

処理の時間が短いということは滞留する排水の量が抑えられるため、設置するタンクの大きさも小さくすることが可能です。このことで処理装置自体の省スペース化にもつながります。

また田中工業所のTF型独自の特徴として、各装置をユニット化している点が上げられます。設置スペースに合わせたユニット配置を実現しているため、現場に合わせた製作が可能です。

なお土砂や重金属といった「密度が大きく、泡に付着しにくい」物質の処理は、加圧浮上装置には向いていません。このような物質を含む排水処理が必要な場合は沈殿による処理など、ほかの方法を組み合わせることが大切になってくるでしょう。

加圧浮上装置が使用される場面

このようなメリットを持つ加圧浮上装置を生かせる場面は、多岐にわたります。

汚泥の圧縮

汚泥を搬出するためには多大なコストが必要となるため、あらかじめその水分を取り除くことで「体積」「重量」とも最小現にすることが求められます。加圧浮上装置では表面に混濁物質(スカム)を浮上させて取り除くため、排水中に含まれる水分を少なくすることが可能です。

排水処理

工場や事業所の排水を処理するときにも、加圧浮上装置が多く用いられます。

とくに水に近い密度である「油分」の除去は、加圧浮上装置の能力が必要不可欠です。そのため石油系の有機溶剤を扱うドライクリーニングの工場、染色をおこなう繊維工場、自動車のオイルが混ざることの多い自動車整備工場、揚げ物など食品加工をおこなうスーパーといった「油」が排水中に混ざりやすい事業所では、加圧浮上装置を導入するケースが多くなっています。

工業用水の前処理

大量に使用される前提の工業用水は飲用よりはしっかりと浄水されていない場合が多く、立地によっては海水から取水して使用することも少なくありません。こうした工業用水の前処理として加圧浮上装置を使い、混濁物質を除去する目的で使われます。

ほかの水処理方法と組み合わせて効率化

また、加圧浮上装置はほかの水処理の方法と組み合わせて使用されることも多いです。

たとえば食品加工後の排水中に含まれる有機物の処理には、バクテリアが使われることがあります。一方でバクテリアは油分に弱い種類も少なくなく、直接バクテリア処理をすると効率が落ちてしまうのです。

このとき前段階として「加圧浮上装置」を使用し油分を取り除くことで、排水中の有機物除去をスムーズに進めることができます。装置の数こそ増えますが処理槽の大きさを抑えることができ、全体としてコンパクトにすることも可能なのです。

一方、密度が大きく沈みやすい砂などの成分は「沈殿処理」、泡によって浮上しやすい密度の小さい成分は「加圧浮上処理」といった組み合わせで使われることも多くあります。

加圧浮上装置のフローシート

弊社・田中工業所が製作・納入する「凝集加圧浮上装置・TF型」の仕組みは次の図の通りです。

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